カナダの語学学校は、短期間で会話力を付けたいという留学生のためのコースから、スポーツやアクティビティを織り交ぜた楽しい語学留学、ビジネスで役立つ英語コース、TOEFLやTOEICの準備コース、大学準備コースというように、様々な特徴を持った学校があります。
カナダの語学学校は、民間の会社や個人事業主が運営していることが多く、商用・プライベート・私立の語学学校などと呼ばれることがあります。コミュニティカレッジ(コミカレ)や大学にある語学コースとは異なります。
語学学校の施設は、商用ビルの一角を使用したものや個人宅のようなところもあります。設備的にはコミカレや大学に劣るものの、留学生を受入れる英会話学校や予備校のような役割を果たしています。
入学時期は、毎月募集しているところがたくさんあるので、いつでも行きたいときに申込める学校もたくさんあります。
短期で会話力を向上を目指す
多くの日本人留学生が語学学校に期待していることは、会話力の向上だろうと思います。
会話重視のクラスでは、色々なシチュエーションを想定してロールプレイングの会話レッスンが行われるなど、会話力アップを重点に置いています。レベルが上がれば、仕事で使えるような英会話も習います。
コミカレや大学附属の語学コースでも会話のクラスはありますが、レベルの低いクラスに限られています。大学によっては、英会話の初心者が学ぶコースは設置していないところもあります。
コミカレや大学の語学コースは、留学生を正規学部へ入学できる英語レベルに上達させることが目的であるため、ライティング・スピーキング・リーディングといったアカデミックな内容が中心になっています。
このため、短期語学留学が目的で、とにかく会話力を上げたい日本人留学生にはコミカレや大学の語学コースは適さないことがあり、英会話を話したいなら語学学校というのが定着しています。
授業料は安いが、そのデミリットもある
高騰する大学やコミカレの授業料に比べて、語学学校は授業料が比較的安いことも人気の一つです。
ビルの間借り、小規模経営、人員が少ないなどにより、低予算で運営している語学学校がたくさんあります。
特別のメソードで教えている、短期集中で授業時間が長い、TOEFLやTOEICを専門に教えるなど、通常の語学コース以外に何らかの特徴があれば、多少料金が高いところもありますが、その辺りは学生の選択次第です。
授業料が安いのはよいのですが、経営が圧迫されて、倒産または撤退する学校が毎年のようにあります。
留学生獲得のための広告宣伝費、賃貸料の高騰、留学エージェントへの報酬支払いなどが負担になって、ジリ貧の語学学校が少なくありません。中には、先生たちに十分な給料が支払えない学校があります。そのため、先生たちがストライキを起こすようなケースもあります。
バンクーバーといった都市部では、英語講師の仕事だけで生活するのは厳しいため、空き時間に家庭教師をしたり、別の仕事を掛け持ちにしている講師もいます。
先生の出入りが激しいところもあり、過去の体験談などを基に、今もよい学校と判断するのは難しい場合があります。
語学学校選びには、語学学校の信用と運営の向上を目指して、語学学校協会に加盟して行動している学校がありますので、選択の際には考慮してみるとよいと思います。
留学というより観光やイベント重視の語学学校もある
一部の語学学校では、短期留学の「楽しい思い出づくり」がメインで、英語を話せるようにするといった実用性よりも、観光やイベントなどを多く盛り込んで楽しさを追求しているところがあります。
特に自然豊かなカナダでは、ちょっとした山登りやハイキング、乗馬、カヌー、スキー&スノーボード、キャンプ&BBQなど、アウトドアでを活かした観光が盛りだくさんです。英語を話すガイドが一緒に行くことで、語学コースの一つになってしまいます。
楽しい企画を出せるのも語学学校の特徴の一つですが、旅行の延長で留学したいのか、それともアカデミックな授業を希望しているのか、その選択を間違えると残念な留学になってしまう可能性があります。
カナダの語学学校の中でも、会話重視、進学重視、観光やイベント重視など、それぞれ特色を出していることが多いので、入学案内やインターネットで学校のホームページを調べてみてください。
アジア圏の留学生が多い語学学校
当然ながら、語学学校は留学生ばかりです。スタッフを除いて、カレッジや大学のように一般のカナダ人はほとんどいないでしょう。
留学生しかいない環境では、留学生独特のアクセントがついて困るという日本人学生の悩みがあります。
アジア系の学生は子供の頃から英語を学んでいる人が結構いますが、お国柄の独特な英語を話すことが多く、英語に関してはおとなし系の日本人学生はそれに毒されてしまう傾向があります。
たとえば、香港人の学生が多いと香港系のアクセントが知らず知らずに身についていたりします。中国、シンガポール、マレーシア、韓国など、その時期によって学生のカラーがあり、仲良くしている留学生仲間によっても様々なアクセントが蔓延します。
カナダで語学留学したり、ワーホリで英語が話せるようになったと言っている日本人学生が、中国や韓国など他国特有のアクセントで話している光景は不思議なものです。
中国人や韓国人に囲まれた留学生活だったのだろうと想像しますが、せっかくカナダまで行ったのにもったいないと思わずにはいられないことがあります。
色々な英語に接することは大切だと思いますが、他国留学生の英語から距離を取るという意味で、カナダ人宅へホームステイしてみたり、ある程度の語学レベルになったら、普通のカナダ人学生が通うコミカレで学んでみるのもいいかと思います。
英会話力向上のために現地の人と交流しましょうと言うと、不特定多数の人が参加できる怪しい英会話サークルをはじめ、犯罪者でも参加できてしまう英語カフェなどのイベントに行ってしまう人がいますが、十分気をつけてください(参照:バンクーバーは安全の勘違い)。
カナダで語学留学をしているからと言って、必ずしも直接カナダ人と交流しなければいけないものではなく、買い物や食べ歩きなどカナダの日常生活を楽しみながら、必要に応じて、簡単に利用できるオンライン英会話を利用する方法もあります。
語学学校の名前にだまされないこと
語学学校の中には、○○○インターナショナル・スクールや△△△インターナショナル・カレッジといった名前を見かけますが、短大や大学というわけではありません。
規模によって、個人経営の英会話教室から会社運営の専門学校といったイメージで捉えてもらうとわかりやすいでしょう。コミカレや大学と混同しないようにしてください。
日本の英会話学校でも、海外大学の分校のように思える名前をつけているところがありますが、それと同じで、名前はあくまでもイメージ戦略と考えておいた方が無難です。
名前から大きなカレッジのキャンパスで勉強するものだと思っていたら、間借りしたビルの一室で授業をやっていてショックだったというのは学生からよく聞く話です。
そういう意味では、名前だけで学校を決めるようなことは、最低限、避けなければなりません。
また、間借りしている教室が入っている大きなビルの全体写真をパンフレットに載せていたりするので、そのビル全体が学校だと勘違いしてしまうことがあります。日本の小さい企業でも使う手ですが、こういった手法にも引っかからないようにしてください。
大学進学には慎重な選択が必要
語学学校でもレベルが上がれば、コミカレや大学進学を目指したコースがあります。
正規学部を目指す学生の多くは、コミカレや大学附属の語学コースに進むのが一般的ですが、語学学校ではTOEFLやIELTSによって直接入学を目指すコースがあります。
語学学校の多くは、語学コースや進学コースを終了したからといって、そのままカレッジや大学に入学はできません。コミカレや大学には独自の入学審査があり、それをクリアする必要があります。
一部の語学学校は、地元の大学と提携していて、卒業した後に大学へ進学できる場合があります。しかし、大学に入ってから規定の英語コースを選択することが必須となっていたり、TOEFLなどの規定スコアを要求されることがあります。
語学学校はピンきりなので、どの語学学校のどのコースを終了したかによって、コミカレや大学での対応は異なってきます。
語学学校の後に、コミカレや大学進学を目指しているときは、語学学校と大学等の提携関係をしっかり確認するといった慎重な行動が求められます。
カナダのコミカレや大学付属の語学コースは、上級コース終了後にはそのまま正規学部に進めるシステムになっていることが多く、正規学部を目指すのであれば、進学ルートが確定していて学びやすいメリットがあります。
ただ、コミカレや大学附属の語学コースは、終了すれば正規学部にいけますが、すべてのクラスを終了するまでに1年以上かかったり、学期ごとの試験が厳しくて落第してしまう学生もいます。そのため、あえて大学等の語学コースには進まず、語学学校でTOEFLの得点を上げて、直接、大学入学を目指す方法を選ぶ留学生もいます。
語学学校ですべては完結しない
カナダの語学学校に通ったけど、環境が悪くて英語がぜんぜん上達しなかったといった話を聞くことがあります。
語学学校には当たり外れは確かにありますが、そこにいれば誰もが英語が話せるようになるという便利なところではありません。習ったことをどう活かすのか、それは自分次第です。
カナダでの日常生活や自分で自習することでも英語力はアップします。そういった意味では、語学学校に過度の期待をせずに、学ぶ機会やツールの一つとして考えておいた方がよいかもしれません。