ドキュメンタリー番組を制作しているThe Fifth Estateが、カナダに来る留学生の受入れ態勢に関する問題について特集していました。
こちらのドキュメンタリー(2022年10月)では、インド人学生がメインに取り上げられていますが、カナダの留学制度や留学エージェントの闇を暴いており貴重な情報だと思います。
数年前までは中国人留学生の数が圧倒的に多かったのですが、近年はインドやネパールなど南アジアからの留学生も増えています。
アジア圏からの留学生増加の理由には、留学生をドル箱とみる教育機関の経営者たちや留学エージェントが絡んでいると指摘されています。
カナダでは、留学生はドル箱と呼ばれており、留学生の受け入れは大きなビジネスチャンスになっています。
規制が少ない中、悪質な学校や留学エージェントが暗躍している一面があります。
この機会にカナダ留学の闇に目を向けることで、成功するカナダ留学の知識を身に着けていただければと思います。
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留学生に支えられているカナダの大学やカレッジ
カナダの大学やカレッジに通う留学生は、カナダ人学生が支払う学費の3~5倍くらいを負担させられています。
しかし、割高な学費を支払っているのにも関わらず、その金額に見合う教育や大学のサービスが受けられるかというと必ずしもそうとは言えません。
国内学生の3~5倍もの授業料を払ってくれる留学生は、現地のカレッジや大学としてはお得意様になっていて、留学生が払ってくれるお金無しでは運営できないカレッジもあります。
今までは赤字経営だった大学やカレッジが、留学生がたくさん来てくれるおかげで黒字経営になったところもあります。
手に職をつける技術系のカレッジでは、学生のほとんどが留学生というところもあります。
大学の中には、政府の補助金や現地のカナダ人学生から得られる授業料より、留学生を多く入れた方がお金がたくさん入るので、大学のキャパシティーを超えてしまうほど留学生をたくさん受け入れているところもあります。
留学生の入学基準を下げて大学に入りやすくした結果、たくさんの留学生が入学するようになって、教育の質や学生のサポートが疎かになっているところもあります。
また、留学生が正規学部へ進むための英語コースや大学準備コースをいく段階も作って、いつまで経っても正規学部に入れないような仕組みになっているところもあります。
インドでのカナダ留学斡旋の問題
前出のドキュメンタリー番組によると、インドでは留学エージェントが学生をリクルートして、カナダに留学させて手数料を稼ぐという商売がものすごく広がっているそうです。
学生一人をカナダのカレッジに入学させることで、20~30万円といった報酬を得られることから、たくさんの留学エージェントが乱立しているそうです。
学生に便宜を図るために別途費用を請求しているケースもあり、カナダの学校から報酬をもらうだけではなく、学生からも様々な手数料を取るという二重取りでかなり稼いでいるようです。
また、「カナダでは簡単に職が得られる」とか、「学校を卒業すれば永住権を取得するのは難しくない」といった嘘を並べているエージェントもいて、その様子も動画内で公開されていました。
学生の意に反して、提携のある学校や報酬の高いカレッジなどを斡旋するといった、一昔前、日本でも横行していた手法も見られました。
実際にそういった留学エージェントを介してカナダに来たインド人学生たちの中には、教室さえ足りず満足な講義が受けられなかったり、クラスの生徒が留学生(インド人)ばかりだったり、仕事は全然見つからないというような事態に陥っています。
日本よりもかなり平均年収が低いインドにとっては、高額な留学費用を支払ってカナダまで来たのに、詐欺にあったような事態に大きなショックと怒りを感じるというのは当然でしょう。
カナダ留学の価値はあるのか
カナダの大学は世界的に認められており、大学のレベル・提供されているコース、教育システム・名声・ランキング等をしっかり調べて留学するのであれば、留学の価値は十分あります。
しかし、一部のコミカレ・専門スクール・語学学校では、利益を追求するばかりで、たくさんの留学生を受け入れることによって、教育の質や学生サービスが著しく低下しています。
また、一部は教育システム自体が崩壊しているようなところもあり、そういった教育機関に進学する価値があるかは大いに疑問です。
留学生であふれているようなコミカレやテクニカルカレッジについては、かなり疑念を持った方がよいと思います。
クラスに英語が十分に話せない留学生が増えた結果、授業にならないといった環境から、カナダ人学生が次々をやめてしまっているところがあります。教授さえも去ってしまい、まともな授業が行われていないこともあるようです。
日本でも、留学生がたくさん入学してくれるおかげて、人気のない地方大学や専門学校の運営が維持されているところがあります。そして、それらの大学や専門学校の教育レベルは低く、留学生が帰国してしまったり行方不明という事態になっています。
カナダのCTV W5によって取り上げられたCape Breton Universityでは、あまりにたくさんの留学生(ほとんどがインド人留学生)を受け入れており、教室が足りない、住むところがないといった状況になっていました。教室が足りないので、市内の映画館で授業をやっている事態には呆れるしかない内容でした。
留学生が困惑していたり苦しんでいる中、大学の経営陣やそれに関わる人たちは、大学運営が成功している&収益が上がっていることに喜んでいて、はたから見れば異常にしか見えません。教育機関ではなく、完全に金儲け主義の施設と言ってもいいかもしれません。
もちろん、この大学が特殊で悪質と捉えられてドキュメンタリーや新聞等でも取り上げられていたわけで、多くのカナダの大学やカレッジは、通常はこんな酷いことをやっていません。
ただし、ここまで悪質ではなくても、少し似たような事態になっているところはあります。
たとえば、過剰に留学生を受け入れて教室や宿泊施設が足りない、英語力の足りない生徒を入学させることで学部レベルのクラスが崩壊してしまったり、落第者をたくさん出しているといったことはあります。
留学先を安易に決めてしまったり、エージェントに勧められるままに決めてしまうと、カナダ留学が残念な結果になってしまう原因がこういった大学やカレッジにはあります。
留学生の奪い合いが英語圏の大学で熾烈になっている
教育機関にたくさんのお金を落としてくれる留学生の奪い合いは、先進国の間で熾烈になっています。
オーストラリアのドキュメンタリー番組によると、留学生はCash Cow(ドル箱)と呼ばれており、一部の大学では留学生をたくさん受け入れるために不正が行われていると大学関係者たちが声を上げていました。
大学の入学基準を満たさないレベルの低い留学生が大学に入学できたり、入学した留学生が課題や試験等で不正を行っていても、大学の経営陣は留学生を増やして収益を上げることに注力しており、大学制度が崩壊に向かっているという教育現場からの切実な声は届いていないようでした。
留学生をドル箱として捉えていて異常な留学制度になり始めているのは、カナダだけで起こっていることではないので、留学先選びは慎重になさってください。
留学エージェントとの長期契約には気をつける
前出のようなトラブルの被害を抑えるために、留学エージェントを使う場合は、長期契約を避ける、または、1~2年といった長期の費用をまとめて支払わないという方法があります。
通常、カナダの大学やカレッジは、語学コースも含めて1学期ごとに支払います。コミカレ卒業や資格を取るために1~2年通う場合でも、一括支払いの必要ありません。学期ごとに支払って、卒業や資格取得を目指すだけです。
一部の私立大学や資格取得コース(民間の学校)などでは年払いを求められることがありますが、カナダではかなり数が少ないと考えてよいと思います。
学生寮も1学期ごとの支払い、ホームステイは学期ごとまたは月ごとの支払いになります。
ところが、留学エージェントに手続きを依頼すると、長期契約をすすめられて年間費用の一括払いやローンまで組まされることがあります。
中には留学エージェントが勝手にパッケージ化して、「語学留学+◯◯資格取得コース」というように1~2年契約が必要なように見せかけていることもあるので気をつけてください。
年間契約にしてしまった場合、留学エージェントに勧められた語学学校やコミカレが、自分の希望したものではなかったとしても、年契約の都合、語学学校やカレッジを変えることができないことがあります。
前出のドキュメンタリーで特集された大学やカレッジのように、現地に行ってとんでもない学校だと知っても、契約期間中は我慢して通うしかない場合があります。
また、まとめて払うと割引があると言われることがありますが、公立の大学やカレッジは、ディスカウントストアで買い物をするような割引は通常ありません。
割引があるということは、学生に対して不公平な授業料の取り方をしている顕著な例です。割引で得をした気分になっていても、元々高い料金提示をしていて、実際には得をしたわけではないというのは珍しくない話です。
以前、2年間の留学費用を留学エージェントにまとめて支払っていた学生さんがいました。まとめて支払えば、少し安くなる契約だったそうです。
その留学エージェントは学期ごとに現地学校に支払っていて、その他の預り金は事務所の家賃など社内で流用していたようです。そして、その留学エージェントが倒産したため、現地学校に授業料等の支払いが滞り、その学生さんは留学を途中で断念せざるを得なくなりました。
もし、前述のように騙されるようなことがあっても、1学期の費用しか払っていなければ、留学エージェントが倒産しても、次の学期から自分で支払って通うことが可能です。
しかし、年額で払ってしまった場合は、多額の資金を失って、留学を断念するしかないような事態に追い込まれるかもしれません。
留学エージェントに長期間の留学費用を預けない、長期契約では自分の自由がなくなるリスクがあるということは、しっかり認識しておいてください。
留学エージェントについてどう気をつけるかと考える前に、別に留学エージェントを使わなくてもカナダ留学はできます。というか、まともに留学している学生の多くは留学エージェントを使っていません。
留学エージェントを使ってカナダに来た人たちでも、最初は不安だったので留学エージェントを使ったけど、実際に現地に来てみると別に留学エージェントは必要なかったと言っている人たちが多いです。
色々不安を煽られて必要のないサービスを契約させられて、それだけで結構な出費をしてしまっている学生もいます。
コミカレの語学コースや語学学校であれば、申込フォームはすごく簡単な書式になっているので、少し頑張れば自分でも申し込めると思います。
自分の進路をしっかり決めよう
前出のドキュメンタリーで取り上げられていたようなカレッジ・大学・留学エージェントというのは、極端な例になるかもしれませんが、留学生はドル箱で金儲けになると捉えている教育機関とその関係者が数多くいるのは確かだと思います。
実は、20~30年前は、日本でも同じようなことが行われていました。当時は、留学斡旋機関や留学斡旋会社などと呼ばれていましたが、やりたい放題で稼いでいた感がありました。
しかし、留学する人達が増え、学生たちが口コミやネットなどを使ってこういった留学斡旋機関の悪行を世に知らしめたことで、悪質な会社や業者は次々と業界から消えていきました。
そして、留学斡旋機関=悪徳業者といったイメージついてしまい、現在では留学エージェントという呼び名に変わっています。
現在、留学生によってカナダにもたらされる収益は、毎年2兆円を超えるという大きなマーケットになっています(2023年/1カナダドル=108円)。
コロナ禍以降、日本では外国人観光客が戻ってきて大騒ぎになっていますが、インバウンド需要は約5兆円と言われています(2023年)。カナダは留学生関連だけで2兆円を稼いでいると考えると重要な稼ぎ頭と言えるでしょう。
政府の方針自体が留学生を増やすことを推奨しており、悪く言えば、留学生をどんどん受入れて儲けよう!と流れになっています。十分な規制や法整備もまだできていないことから、一部ではやり放題になっているケースがあります。
その中で、悪質な教育機関や留学エージェントもいるので、それらに関わらないようにするために、自らしっかり調べて留学先を選ぶように努めてください。