カナダは、留学先として安全な国といわれています。しかし、日本と同じように安全だと思って留学や旅行に行ってしまうと大きなトラブルに遭遇することになるかもしれません。
忘れて欲しくない事件が、2016年9月、カナダのバンクーバーで起きました。それは、日本人女性の留学生が殺害されるという悲惨な事件です。
現地に住んでいる日本人などがインタビューに応えていて、違和感を覚えたのが、「安全なバンクーバーでまさかこんなことが起こるとは・・・」という発言が繰り返されていたことです。
バンクーバーが安全というのは本当でしょうか?
今後も被害をもたらす元凶
観光や留学関連でビジネスに携わっている人たちは、犯罪があっても風潮被害を恐れてか、「この街は安全」と平気で言うことがあります。前の年に起きたような事件は、すっかり忘れたふりをしているかもしれません。
当時、ニュースの街頭インタビューや日本のSNSでも、「不運だった」ということで済まされてしまいそうな雰囲気が一部あり、疑問を持ちました。
バンクーバーは安全で、被害に遭った方が運が悪かったというような風潮は、今後も被害をもたらす元凶ではないかと思ってしまったほどです。
バンクーバーは安全?
私はバンクーバーが安全とは、一度も思ったことがありません。
現地の人たちは、防犯意識を持って生活しています。そのレベルが日本とは全く違うといってもいいでしょう。その危険性を察知する感覚は、短期留学では掴み切れないことがあると思います。
アメリカの都市に比べたら、凶悪犯罪が少ないという意味で、多くの方はバンクーバーは安全と言っている程度ではないでしょうか。
アメリカでは、学校やカフェに銃を持った人が入ってきて乱射したり、子供が頻繁に誘拐されたり、性犯罪については非常に多く、安全と思われがちな大学のキャンパス内でも頻繁にあります。
「アメリカと比べたら安全な方」といった、どこと比べているのかが抜けているため、カナダに来て日が浅い日本人の中には、バンクーバーは「日本と同じように安全なんだ」と思い込んでいる人がいるのではないでしょうか。
そして、その誤った認識と気の緩みが、犯罪の被害者になる一つの要因になっているのかもしれません。
世界的な順位から見るカナダの安全と危険
様々な統計を出しているNUMBEOによる治安の悪い国ランキング(クライム・インデックス2017)で、カナダは78位でした。アメリカは53位、日本は118位でした。ちなみに、不名誉な1位はベネズエラでした。
カナダの78位は微妙でわかりにくいですが、77位がフィリピン、79位がニュージーランドでした。フィリピンでは、邦人が殺害されたり強盗に遭うなど日本でもよくニュースになります。
日本が118位ということを考えると、カナダの78位はかなり差があると思ってほしいところです。順位で行けば、アメリカ寄りです。決して、カナダは日本と同じように安全ではないということです。
バンクーバーの犯罪件数
バンクーバーの犯罪件数ですが、2017年の統計から一部抜粋します(参照:KPI Report)。
殺人:19件
性犯罪:463件
銀行強盗:52件
発砲:31件
商業施設侵入:2171件
住居侵入(個人宅):1747件
自動車盗難・車上ねらい:12489件
自分の住んでいる日本の街と比べてください。この数字を見てもバンクーバーが安全といえる人がいるでしょうか。
日本ではコンビニ強盗が1件起きるだけでも大きなニュースになります。銀行強盗なんて日本で起きたらそれこそパニックですが、バンクーバーでは年に2桁も発生しています。
バンクーバーから近い、アメリカ・シアトルの犯罪件数(2015年度)も参考にしてください(参照:The FBI Releases 2015 Crime Statistics for Washington State)。
殺人:23件
レ〇プ:144件
強盗:1532件
暴行:2394件
住居侵入:7677件
窃盗:26199件
自動車盗難:3878件
アメリカ(シアトル)は、確かに危険というのは分かると思います。バンクーバーの方が少しいいように見える部分もありますが、バンクーバーが安全とは全然言えないでしょう。
30代の女性が被害に遭いやすい?
カナダでは、30歳代の日本人女性の語学留学生が結構います。そして、被害に遭う人は、社会に疎い若い学生ばかりではなく、社会人経験のあるはずの30代の女性にも多いともいわれます。
いつでも、何歳でも留学してよいと思いますので、30代の留学がよくないというわけでは決してありません。ただ、年齢的な側面から、なぜ被害者になりやすいのかを考えてみてください。
30代の女性が被害に遭ってしまう原因の一つとして、若い学生より目標がしっかりしていて、一生懸命であることが、災いしているかもしれません。
彼女たちの多くは、自分で留学資金を貯めて、仕事を辞めるなど大きなリスクを負ってカナダにきています。そのため、現地で積極的に活動しようとするがゆえに、時に怪しい人に出会ってしまう確率が高くなることがあります。
また、年齢的に結婚などを考えて、カナダで出会いを求めているといった人もいるでしょう。日本ではなかなか良い縁がなく、海外で出会いを求める女性がいるのは珍しい話ではありません。
実際、カナダ留学やワーホリをきっかけにして、カナダ人と出会って結婚する日本人がそこそこいます。そういった話は、テレビやネットなどで紹介されることがあり、影響される人もいるでしょう。
カナダ人男性と結婚できれば、年齢を含めた日本の面倒な柵から解放されるかもしれません。外国人と結婚して海外に住むという、勝ち組の気分を味わえるともなれば、出会いを求めて頑張ってしまうことがあるかもしれません。
しかし、見知らぬ土地で英語力も十分ではないという限られた中では、ナンパや出会いには犯罪の被害者になってしまう可能性も秘めています。特に語学留学の段階では、言葉の意味やニュアンスを掴み切れないでトラブルになることがあります。
日本語で話をしていれば、この男性は怪しいというのは、多くの女性が鋭く感じる取ることができるでしょう。
ところが、英語になると子供くらいの知識しかありませんので、そこまで判断ができないケースがあります。また、英語が大して分からない日本人だからこそ、それを利用してくるカナダ人もいます。
運が良ければ、普通のカナダ人男性とお付き合いができるかもしれませんが、慎重さに欠ければ、犯罪に巻き込まれてしまう可能性があります。
英語がたくさん話したい日本人への罠
留学先では、色々なタイプの留学生がいます。遊び半分で来ている学生、淡々と学んでいる学生、切羽詰まっていると思えるほど必死な学生などがいます。
遊んでいる学生が犯罪の被害に遭うのであれば分かりやすいかもしれませんが、意外に必死に学んでいる学生が犯罪の被害に陥りやすい面があります。
前出の30代の留学生にも当てはまりますが、年齢的に新しいことをするにはギリギリという切羽詰まった勢い(やる気)で、早く英語が自由に話せるようになりたいという強い思いが、犯罪に引っ掛かりやすい状況を作っていることがあります。
留学先で、「プライベートでもっと英語教えてあげるよ」といった甘い言葉に騙されて、それほど面識のない男性について行ってしまう日本人女性を見たことがある人は多いでしょう。
「僕の住んでいるシェアハウスは、カナダ人の男女が数人住んでいて英語がたくさん話せてきっと楽しいよ。遊びにおいでよ。」なんて言われたら嬉しくなって、ついて行ってしまう人がいるのではないでしょうか。本当にそうかもしれませし、騙されて監禁される可能性もゼロではありません。
バンクーバーは安全な街だから、出会う人がみんな親切でいい人といったような考えは捨てて欲しいです。常に疑う心を持って欲しいですし、身の危険を少しでも感じたら、相手に失礼だと思っても断固として避けてください。本来、英語を学ぶのにそこまでのリスクを負う必要はないはずです。
スポーツやカルチャー教室で同じ趣味の友達を作ろう
とにかく英語が上達したいから英語を話したい!といって、変なカナダ人に引っ掛かるようでは困ります。言葉が話せないのに、言葉で繋がろうとするのは、無理なことが多々あります。不利な立場で、利用されてしまうこともあるでしょう。
コミカレや大学の正規学部と違って、カナダ人学生と出会う機会のない語学留学をしているという前提で言えば、一般のカナダ人に英語を教えてもらうという環境を求めるのではなく、英語以外の学びや趣味の世界で繋がった方が、本当の友達になりやすいと思います。たとえば、スポーツや音楽などが分かりやすいところでしょう。
カナダ人と一つの趣味を通して仲良くなることで、初心者レベルから中級くらいまでの英会話の上達が早くなることがあります。たとえば、ウインタースポーツの盛んなカナダでは、スキーやスノーボードを通してカナダ人と仲良くなる日本人が結構います。
真剣に語学留学している人には、スノボーなんて遊んでいる暇はないと思うかもしれません。また、英語以外は無駄なことに思えてしまうかもしれませんが、簡単に参加できるカルチャー教室やスポーツクラブなどを利用することを考えてみてはいかがでしょう。
同じこと学んだり、同じスポーツを楽しむような環境では、友達になりやすいです。英会話カフェなどに行って、変なカナダ人を追いかけているよりずっとましだと思います。
日本には様々なカルチャー教室がありますが、バンクーバーでもたくさんあります。日本的なものでは、空手や合気道、茶道や華道などもあります。
日本に興味を持って学んでいる人たちの集まりでは、日本人が参加してくれば、歓迎してくれるところもあるでしょう。
その他には、ヨガやダンス、アートやクラフト、クッキングなど色々な教室があります。言葉の不安はあるかもしれませんが、体を動かすものであれば、言葉の壁は低いです。ただし、怪しい啓蒙セミナーや宗教には行かないでくださいね^^;
特に子供から大人まで参加している団体や教室がおすすめです。活動の多いグループでは、ハロウィンやクリスマスなどのイベントが頻繁にあり親交を深めやすい環境にあります。また、イベントによっては、スタッフの一人として共同作業に参加できることもあります。
しっかり組織された教室には、犯罪歴のある人は入りにくいですし、薬物をやっているような人は排除されます。ちょっと怪しい人がいたとしても、良識あるカナダ人が、あの人は少し注意した方がいいよと教えてくれると思います。
カルチャー教室といった習い事の団体がすべてが安全とは言えませんが、英語が話したい!カナダ人のお友達がほしい!と言って、怪しいパーティーへ参加するより、こういった環境の方がずっと安心ではないでしょうか。
日本の安全とは基準が違う海外
何度も繰り返して言いますが、日本とカナダでは「安全」という基準が違います。そこを間違って捉えてしまうと、犯罪に巻き込まれてしまう確率が上がると思います。
日本人は海外で危険を察知することに疎いとよく言われます。日本人は18歳くらいでも、現地の14~15歳よりも子ども扱いされてしまうほど警戒心が低く、欧米では社会的&精神的に幼いといわれることがあります。
日本人女性で被害に遭う人が毎年のようにいることは、現地ではよく知られています。ちょっとしか面識のない人について行ってしまったり、一緒に車に乗ったりしてしまうことがありますが、現地の人からしたら信じられない行為です。
知らない人についていってはダメと子供のころから教えられているはずなのに、それが守れない結果、事件に巻き込まれてしまうケースがあります。
あえてきつく言いますが、ちょっと英語で会話をしたから「彼はお友達」というように頭の中がお花畑になっていてはだめでしょう。
せっかくカナダに来たのだから、留学生同士ではなく、カナダ人と英語をもっと話したい、カナダ人と知り合いになりたい、でも、カナダにいられる日数と資金は限られるといった焦りもあるかもしれません。その結果、気がつかないうちに、結構リスクのある人付合いをしてしまう人もいますので気をつけてください。
細心の注意を払っているからこそ、安全な生活ができる
海外では、殺人といったような大きな事件にならなければ日本でニュースになりませんが、日本人学生が暴行や強盗など様々な事件に巻き込まれています。
日本では夜遅くに女性一人で歩くことができるほど安全と言われます。都心の公園で、夜に散歩やジョギングをしている女性たちもいます。海外で同じようなことをしたら、高い確率で犯罪に巻き込まれるでしょう。
警戒心無く人と交流したり、ちょっと英語を教えてくれるからと言って、どこに行くのかも分からずついて行ってしまう危険性も認識してほしいです。
知り合いの家やパーティーなどに行って、飲み物から目を離すだけでも危険なこともあります。飲み物には睡眠薬などを入れられることが当たり前のようにあるからです。
複数の人が集うところでは、グラスをテーブルに置かず、飲み終わるまでずっと持ち歩いている女性が多いのは、こういった事情があるからです。現地の人は、こんな些細なことでも気をつけながら自分を守り、安全な生活をしていることを知ってください。
今回はバンクーバーを例に話を広げてしまいましたが、トロント、カルガリー、モントリオールなど、カナダの都市どこに行っても共通していえることです。
日本でいう安全と比べたら、カナダでいう安全は全く同じではないことを認識して、犯罪の被害者にならないように気を配り、カナダで素敵な時間を過ごしてください。