たくさん魅力のあるカナダ留学ですが、問題や課題がないわけではありません。そこで、大学入学から就職に関して少し触れてみたいと思います。
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まず、カナダの大学は、留学生の受入れにアメリカの大学ほど積極的ではないといってもいいでしょう。
アメリカと比べるとカナダの大学数がとても少ないので、留学生は増える一方でも、受入れ枠は限られるために、厳しい入学制限をせざるをえない大学が結構あります。
コミュニティー・カレッジでも、地元学生が優先され、各コースで留学生受入れ制限をしたり、クラスの定員に余裕がないと入れていくれないこともあります。
新しい大学やカレッジは徐々に増えていますが、地方で大学教育を受けられる機会を広げるといったことを目的にしているようです。
せっかく新しい大学はできていますが、留学生としては田舎の無名な大学にわざわざ行きたがらない現状があります。日本でも地方にできた新しい大学へ行きたがる学生は、自宅から通える地元学生を除いて余りいないでしょう。
カナダの大学やコミュニティ・カレッジは州立が非常に多く、税金でまかなわれている教育機関に留学生が増えることに積極的ではない現実もあります。
こういった税金の不公平さを無くすため、多くの大学やカレッジでは、留学生用の授業料が設定されていて、カナダ人学生よりも多く支払っています。州によっては、留学生と地元学生の授業料に6~7倍の差があります。
自分たちの税金がつぎ込まれている大学やコミュニティ・カレッジに優秀な留学生が押しかけ、地元の学生が入学できなくなるのではと不安に思っている地元の人たちがいるのも事実です。
一時期、オンタリオ州の大学医学部ではアジア系の留学生が非常に多くなり、新聞や雑誌などで特集されたことがありました。危惧されていたことは、留学生が増えることで、将来、カナダ人の医師不足が生じるのではないか、言語の問題で十分に意思疎通のできない医師が増えるのではないかといったことがありました。
大学入学の留学生枠が小さいために入学倍率が高くなって、カナダ人学生が難なく入学できる普通の大学でも、留学生にとってはアメリカの有名大学並の競争率になることがあります。
すごく努力して入学したのに、入学してしまえば普通の大学…というギャップがあって、アメリカの大学に移っていく留学生もいます。
カナダ人にとってもアメリカ留学は人気で、優秀なカナダ人学生でお金に余裕があれば、より良い教育環境と研究施設を求めて、アメリカの大学へ留学していくことは珍しくありません。
カナダ人のノーベル賞受賞者がたくさんいることは余り知られていないかもしれませんが、その多くがアメリカの大学院を卒業しています。
大学はカナダで学んで、その後、大学院で修士や博士課程をアメリカで学んでいるケースが多々あります。後にアメリカ国籍を取得しているカナダ人が結構いて、アメリカ人のノーベル受賞者としてカウントされていることがあります。
日本での就職を考えた場合、カナダの大学は、アメリカの大学ほど認知されていないため、その評価にも大きな差が生じる可能性があります。
カナダでもトップ10に入る、トロント大学、ブリティッシュ・コロンビア大学、アルバータ大学、マギル大学といっても、知っている日本人の方は少ないでしょう。ちなみに、これらの大学は世界ランキングでも上位に入っています。
日本では、名前は聞いたことがあるといっても、その世界的な評価の高さまでよく知っている人はとても少ない現実があると思います。
アメリカの場合は、ワシントン州立大学やカリフォルニア州立大学というように○○州立大という名前を聞いただけで、本当に優秀かそうでないかは別として、聞いたことあるような気がすると思ってしまう人は多いでしょう。
ニューヨーク、カリフォルニア、ワシントンなどといった名前が大学名称に付いていると親近感があって、その実力は知らなくても、知名度のある大学と勝手に思い込んでしまう人もいるでしょう。
カナダの場合は、アルバータ、マニトバ、サスカチュワン(いずれもカナダの州)といっても余り日本人には馴染みのない名称でしょうから、アメリカに比べてその知名度のギャップは大きいです。
適切な評価がされていないのは、日本人の卒業生が少ないのもその原因の一つでしょう。
日本では、アメリカの大学を卒業した人たちが様々な分野で活躍しています。有名企業の社長や重役、ジャーナリスト、アナウンサー、音楽家、医師、研究者などその数を上げればキリがありません。
しかし、カナダの大学卒業者で有名な日本人は?と聞かれても答えが出てこない人が多いでしょう。
就職したい企業に大学の先輩がいないというのは、日本では不利になることがあります。また、大企業や官公庁によっては、大学の派閥があり、就職できてもその後が難しいことがあると思います。
アメリカと比べて、カナダと日本の政治的な繋がりは希薄で、貿易をしている日本企業が少ないわけではありませんが、余りニュースでは取り上げられない事情もあるでしょう。
せっかく優秀な大学を卒業したのに、知られていないカナダの大学だからということで評価が落ちてしまうのは悔しいです。
ただし、これは日本の会社に就職する場合のことで、北米や外資系の会社に就職する場合は実力主義が多く、カナダの大学だからといって評価が下がることは少ないと思います。
カナダ留学の課題をあげましたが、色々リサーチしたり準備をすることで、不利と思われる点は有利な点に変わる可能性があります。
たとえば、カナダは資源や食品等を日本に輸出しており、アメリカほど多くはありませんが日本の会社とも関係があります。そういった面からカナダを熟知して評価してくれる日本企業を探せば、それはチャンスになる可能性があるでしょう。
カナダの大学を出るだけの力があれば、必ずしも日本企業に就職する必要はなくなるでしょうから、そういった意味ではカナダを基点としてグローバルな道を歩むこともできるでしょう。
カナダが得意としている分野、輸出入を含めた日本との関係などを調べた上で、将来のステップをしっかり考えて、カナダ留学を考えてみてください。
カナダ留学後に帰国する人がいる反面、カナダに残る人たちもいます。
カナダでの就職は、専攻などにもよりますので、必ず希望する仕事が見つかるとは言いがたいです。
日本人に有利な就職先を考えた時、カナダにある日本企業はアメリカに比べたら少ないですし、日本と接点のある仕事もアメリカの方が多いです。基本、日本に帰国した方が就職しやすい環境にあると思います。
もし、カナダに残った際は、学歴や職歴など個々によって条件が異なるのですが、アメリカに比べてカナダの方が移住する権利を得やすいといわれています。
カナダでも年々審査基準が高くなり移住することが難しくなってきていますので、簡単にはいえませんが、将来、海外に移り住みたいと思っているのであれば、カナダ留学を足がかりに移住計画を立ててみてもよいのではないでしょうか。