カナダをはじめとした英語圏の高校留学のメリットには、英語力が飛躍的に伸びるということがあります。
若いほど英語を吸収しやすいというのはよく知られていますが、小中学生の留学は親を伴わないと難しいです。そこで、高校生は子供だけでも留学できるということで留学を検討する家庭があると思います。
しかし、高校留学のデメリットは、一般的に費用が高い、日本語能力が中学生レベルで留まる、英語以外の学力が日本ほど伸びない、犯罪に巻き込まれやすいことなどがあります。それらのリスクや対策を考慮した上で、カナダやアメリカなど英語圏への高校留学を考えてみていただきたいと思います。
高校留学は安くない
高校留学は、費用がとても高く、大学に行くくらいのお金が必要になります。
日本の公立高校は、1年間で10~30万円ほどの授業料がかかっていたと思います(その時期の税制、学校や地域にもよります)。その後、高校授業料無償化が始まり、授業料の面では負担が減りました。
カナダに行くと留学生(外国人)になりますので、カナダ政府からの援助はなく、公立私立は関係なく、すべて自費になります。
そのため、公立高校に通う授業料だけで、カナダの大学やコミュニティカレッジに通うくらいの費用が必要になってくると思います(学校や為替相場により異なります)。カナダでは、年々、学費や滞在費が上がっていますので、その物価高についていくことも大変です。
日本でも、国や都道府県から様々な補助金等がない場合、公立高校に通うのに年間150万円くらいかかるという試算がありますので、異常な料金設定ではありません。
カナダに行けば、学費だけでなく、生活費(ホームステイや学生寮費、食費、通学費、教材費など)もかかりますので、全部で年間200~250万円以上必要になる可能性があります。私立高校では、年間300万円以上かかることもあります。※この金額は執筆時のもので、年々料金は上がっており1.5~2倍程度まで上がっても不思議ではありません。
日本の公的な支援のある高校に通えるというのは、カナダに行くよりずっと少ない予算で教育が受けられて、実はとても恵まれた教育環境といえます。
高額なカナダ高校留学に価値はあるのか?
日本の公立高校と同じような費用でカナダの高校へ行けると思っていると、実は年間で数百万円もかかる!となればきっと驚かれるでしょう。
多くの方が、高校留学しない一番の理由は費用であると思います。
日本の有名私立高校へ行くことを考えれば、金額的には大差ないと考える方もいるかもしれません。ただ、高額な授業料を払って日本の有名私立高校へ行くのと、カナダの普通の公立高校へ行くことを比べたら、そこに何百万円もかける価値を見出せるかが疑問です。
それだけの大金が必要になるのであれば、高校留学より大学進学にお金を回したいというご家庭が多いと思います。
そこで、交換留学や短期留学といった半年~1年間程度の留学を選ぶ高校生が多数を占めるのではないでしょうか。
カナダでは後見人が必要
カナダの高校留学(未成年)には、後見人が必要になります。カナダに親類や友人などがいればいいですが、そうでない場合はお金を払って後見人をお願いすることになります。(※執筆現在)
高校によっては、教師やホストファミリーなどが後見人になってくれることがありますが、高校生は私生活でトラブルに巻き込まれることが多く、そこまで責任を負いたくないという学校もあります。
ここで留学エージェントが関わってきて、後見人を探してもらったり、代行してもらうことで高額な費用を支払うケースが珍しくありません。
犯罪に巻き込まれやすい高校生
高校生が親元を離れて海外に行くということで、犯罪に巻き込まれやすいデメリットがあります。
日本では、殺人のような大きな事件にならないとニュースとして取り上げられませんが、海外で日本人学生が被害にあっている傷害や暴行等の犯罪は多数あります。
様々なパーティーや集まりなどでは、薬物やマリファナなどを持ち込んでくる学生は珍しくなく、興味本位で日本人学生も関わってしまうことが後を絶ちません。
友達作りとして参加したものの、悪い方向に進んでしまい、大麻使用などが見つかって日本へ強制送還されるという学生もいます。将来、海外へ行きたいと思っても強制送還という過去が足かせとなって渡航が難しくなることがあります。
他人をどこまで信頼できるのか
信頼していたホストファミリーや関係者に裏切られることもあります。
アメリカでは数多くの被害が報告されており、使用人のように働かされたり、ひどいケースでは性的虐待があり、英語の自由に話せない弱い立場の子供たちは、誰も助けてくれる人がいない中で、その被害を訴えることさえできないことがあります。
親元を離れて未成年者が犯罪に巻き込まれていく、または、犯罪の被害者になってしまうケースは留学の裏の部分ですが、留学を売り物にしているところでは当然こういった情報は出したがりません。これは私費留学だけではなく、公的な交換留学でも同様です。
留学エージェント、留学先の高校、ホストファミリー等は、24時間子供を守ってくれるわけではありません。
本当に子供を海外に出して大丈夫なのだろうか?赤の他人に任せてしまっていいのだろうか?もっと大人になってから留学した方がいいのでは?ということは、十分家族で話し合ってもらいたいです。
高校中退から留学
高校留学を希望する学生さんの中には、日本の高校になじめなくて孤立しているとか、色々な理由で中退したという方もいるかもしれません。
場所が変われば状況が良くなる可能性はありますが、海外へ行くと外国人ということでさらに孤立してしまうことがあります。
いじめに関しては日本だけの問題ではなく、カナダやアメリカの学校に行ってもそれはあります。海外へ行けば、そこはすばらしい世界とは限らないのです。
最近は、通信制高校が充実してきているので、そういった通信制学校で学んで高卒資格を得たり、高等学校卒業程度認定試験(旧大検)を得てから海外へ行く方法もあります。
また、カナダのコミュニティーカレッジ(コミカレ)では高校卒業資格を取るコースがあり、年齢や語学力の問題をクリアできれば、短期間で高卒の資格を得ることができます。
コミカレで高校卒業資格を得るという方法は、高校生活の思い出作りはできませんが、何百万円も出して3年間も高校に通う必要がなくなります。
日本の高校教育は優れている
日本の教育が優れていることは、日本にいると気がつかないことがあります。
確かに北米へ行けば英語は上達しますが、技術力に優れる日本が得意とする理数系などは日本で教育を受けた方がはるかに進んでいるケースがあります。
英語だけでいえば、留学は大きなステップです。しかし、総合的な力でいえば必ずしも留学がベストとはいえないことがあります。
個人的な意見ですが、私が出会った高校留学した日本人学生の多くが英語の日常会話はすごく上達していましたが、日本語は中学生から成長していませんでしたし、学力的には普通以下に感じることが多々ありました。
こういった日本人学生は、日本語の語彙力が低く子供と話しているようで、大学に入っても大人の会話ができなかったです。海外に行ってから日本語の学習を怠ったことによる部分もありますが、将来、日本に戻るのであれば、日本語力はとても大切だと感じました。
中学校と高校では語学力がものすごく伸びる時期です。その時期に海外へ行くことは英語の上達に大きく貢献します。
気が付きにくいですが、中高生の間、日本にいれば日本語がすごく上達しています。この時期に学習を怠った学生は、社会人になって言葉がしっかり話せない、漢字の読み書きができなくて苦労します。
日本語は当たり前に身についていると思うかもしれませんが、中学校と高校では語彙力が増えて、高度なレベルで論理的に考える力なども養われるといわれています。
つまり、高校まで他の教科も含めてしっかり日本語を学ぶことで、日本語の語学力だけでなく思考能力なども高めることができます。
こう考えると日本の高校に通うことは決して悪いことではないでしょう。
詰め込み学習や受験競争ばかりで自由が無いなど不平不満はあるかもしれませんが、基本的な学力を伸ばすという意味では、日本の教育はそれなりの価値はあるだろうと思います。
日本は技術立国とよばれ、島国なのに世界の主要経済国です。その日本には優秀な人材がたくさんいます。その多くは、英語は話せないし、外国で教育を受けたこともありません。この日本で教育を受けてきています。
どんな選択肢があるのかじっくり考えてみると、一部の優秀な全寮制高校などを除けば、無理な出費やリスクを取ってまでカナダの高校を選ぶ必要はないかもしれません。